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ある事件

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1: 08/11/12(Wed) 03:24
読みにくかったのでコピペしました。
2: 08/11/12(Wed) 03:24
東京都大田区のマンションで今年1月、同居していた無職のFさん=当時(53)=の左背中を果物ナイフで刺し、失血死させたとして、傷害致死罪で起訴された元女優のK被告(32)の初公判が11日午前10時、東京地裁422号法廷で始まった。K被告は芸能界で活躍していた経歴の持ち主だ。平成8年、大手自動車メーカーのキャンペーンガールとして芸能活動をスタート。その後、レースクイーンを経て女優に転じ、Vシネマに出演したり、写真集を3冊発売するなど活躍の場を広げていた。14年、病気を理由に突然の引退。失意のK被告を支えていたのが、交際を続けていた被害者のFさんだった。
2人が同居していたマンション近くの地元商店街では、仲良く腕を組んで歩いたり、居酒屋で酒を飲み、K被告が「パパ」と呼んでFさんに甘える姿がたびたび目撃されていた。関係者によれば、Fさんは事件前に末期の肝硬変で「余命半年」と宣告され、K被告は20歳以上も年上の恋人をけなげに支えていたという。
“蜜月”の末に起きた凄惨な事件。K被告はFさんをナイフで刺した後、傷口に瞬間接着剤を塗り続け、傷口を塞ごうとしていた、とされる。「Fさんが酒を飲むと日常的に暴力を振るわれた」「事件当時の記憶がない」。取り調べ段階で、被告はこう供述していた。公判では犯行の詳しい動機や経緯、その後の異常な行動の理由が明らかになるのだろうか。Fさんの「暴力」については、捜査関係者の間に「SM行為の延長ではないか」と指摘する声もあるのだが…
当初、K被告は警視庁に殺人容疑で逮捕された。その後、鑑定留置となり精神鑑定。東京地検は被告の刑事責任能力は問題ないと判断したが、証拠上から「殺意」の認定が困難として、罪名を傷害致死に切り替えて起訴した経緯がある。
この日の公判では、被告の罪状認否や検察側、弁護側双方の冒頭陳述読み上げなどを経て、検察側の証人2人の尋問が行われる予定。あす12日には被告人質問や論告求刑まで進み、結審する“スピード審理”の見通しだ。
3: 08/11/12(Wed) 03:30
午前10時すぎ、K被告が入廷してきた。その姿に、満員の傍聴席から視線が一斉に注がれる。黒いジャケットに黒いパンツ、首もとが広く開いた白のカットソー。髪は胸まであり、下の方は茶色が残っている。細身でスタイル抜群。顔色は冴えないが、華やかな経歴を誇った独特の“オーラ”を放っているようだ。

K被告「K・Eです」

裁判官から、予定時間通りに開廷が告げられた。冒頭手続きのため、証言台に立つよう指示されたK被告は、ゆっくりと移動。小さな声で名前や住所などの質問に答えていく。続いて、検察官が起訴状を読み上げた。

検察官「被告人は平成20年1月26日午前5時ごろから午前6時40分ごろまでの間、東京都大田区○○の被告人方で、交際していたFさんに対し、刃渡り9・8センチの果物ナイフで左背部を1回突き刺し、同日午前7時57分ごろ、××病院で肺損傷に起因する出血性ショックにより死亡させたものである」

裁判長「何か言いたいことはありますか」

罪状認否である。

K被告「記憶がないので分かりませんが、私の意志で、彼を、大切な彼を傷つけることは絶対にありません」

「記憶がない」-。やはり法廷でも同じ主張のようだ。弁護人がこれを補足する。

弁護人「暴力をふるわれ、意識朦朧(もうろう)状態の中で強制されたもの。責任能力はなく、無罪です。また、Fさんの死は末期の肝硬変によるもので傷害と死亡との間に因果関係はありません」

この主張について、裁判長は「少し分かりづらい」と指摘。他の裁判官と1~2分間にわたって協議し、被告は席に戻された。

弁護人「つまり被告を道具に使い自傷行為を行った、もしくは第三者に刺されたという主張です」
裁判長「公判前整理手続きの際の主張と違う面があるのかな、と理解するのですが…。新たな証拠を請求するのでなければ検察官もよろしいですかね」

続いて検察側の冒頭陳述だ。「時系列表」と書かれた大きなボード3枚が、検察官の後方に広げられた。裁判員制度を意識した試みだろうか。やがて女性検察官が立ち上がり、事件概要に触れた後、K被告とFさんとの関係から説明を始めた。

女性検察官「被告はFさんと10年前以上に知り合い、交際を続けていました。被告は性嗜好障害のサドマゾヒズム、いわゆるSM嗜好があり、以前からFさんとの間で、お互いに殴る蹴るなどの暴力を振るって性的興奮を高めた後、性行為に及ぶといったSMプレーを行っていました。被告は知人に、Fさんとの間の暴力がコミュニケーションみたいなものだと話していました」

SM、性行為…。公判スタート早々に飛び出した刺激的な文言に、廷内の空気が一変した。
4: 08/11/12(Wed) 03:32

女性検察官が冒頭陳述の読み上げを続ける。後ろに貼り出された「時系列表」と書かれた紙には、犯行当日の2人の行動が色分けして記されている。K被告は、身じろぎもせず、正面の女性検察官をまっすぐ見つめている。

女性検察官「犯行前日の平成20年1月25日夜、被告はJ駅でFさんと待ち合わせ、アルコール類などを購入した後、被告宅に帰宅しました」

読み上げる口調も、ゆっくりとした「ですます調」だ。
Fさんは翌朝の午前4時45分ごろ、1人でコンビニに買い出しへ。家で待つK被告のために酒などを買い込んだというが、この後、悲劇は起きた。

女性検察官「Fさんが外出する前か帰宅した後、被告は自宅でFさんから暴行を受け、顔面や両腕などにけがを負いました。その際、Fさんも被告から暴行を受け、顔面擦過傷などのけがを負いました」

これまでの冒頭陳述で、検察側は「K被告にはSM趣味があった」と指摘。これもSMプレイの一種だったのだろうか。いずれにしても、この日はただの性的プレイには終わらなかった。

女性検察官「Fさんが午前5時ごろに帰宅した後、被告は部屋にあった果物ナイフで、ジャンパーの上からFさんの背中を1回刺しました。被告は午前6時40分ごろに119番通報しましたが、Fさんは搬送先の病院で死亡が確認されました」

Fさんの死因は、肺損傷による失血性ショック。K被告が刺した傷が致命傷になったのかは、今回の裁判の大きな争点の一つだ。続いて女性検察官が「次は本件の争点について説明します」と前置きすると、男性検察官が指示棒を持って、争点についてまとめた紙の前に立った。紙には「第1 被告人が被害者を刺した」「凶器は果物ナイフだった」の文字。TVのバラエティー番組でおなじみのクリップボードのように、一部は白い紙で隠されている。女性検察官は説明に合わせて紙をめくると、「着衣には被害者のけがと合致する位置に痕跡」といった文章が登場した。立証する内容をより細かく示したもののようだ。

女性検察官「Fさんの着衣には、けがと合致する位置に刃物が刺さった痕跡がありました」

横に立った男性検察官も、先の赤い指示棒で該当箇所を指し示している。

女性検察官「次に…。ええと、すいません、ちょっと待ってください」

ここで、説明が中断した。横の男性検察官が、なにやら一生懸命パソコンをいじっている。どうやら予定していた画像がでないようだ。
女性検察官「失礼しました。モニターをご覧ください」
5: 08/11/12(Wed) 03:32

法廷の両側の壁に設置された大型モニターに、洋服のイラストが表示された。イラストの各所には×印がつけられており、どうやら、Fさんが死亡時に来ていた洋服のようだ。

女性検察官「×印の位置が、刃物が刺さった痕跡のある位置です」

K被告は、まっすぐモニターを見つめているが、あまり表情は変わらない。

法廷に設置された大型モニターと、争点が書き出された紙を使いながら、女性検察官が冒頭陳述を読み上げる。両側を刑務官に挟まれて着席したK被告の表情は、胸のあたりまでのばした長い髪にさえぎられ、うかがい知ることはできない。

女性検察官「(K被告の自宅から押収された)果物ナイフの刃体には(死亡したFさんの着ていた服の)繊維が付着していました。また、刃体についていた血液様のものからは、FさんのDNA型を検出。ナイフの柄からは(K被告とFさん)2人のDNA型を検出しました」

モニターには、凶器とされる果物ナイフのイラスト、付着物の説明文が映し出されている。女性検察官はこのほかにも、「Fさんの背中の傷がナイフの形と符合している」「Fさんが来ていたジャンパーにもナイフと合致する傷がついている」など、この果物ナイフが凶器であるとする根拠を読み上げた。

女性検察官「次に犯行現場が被告宅であることを、1~4の事実で立証します」

女性検察官の後ろに張り出された大型の紙には「(1)被告宅のベッドに被害者の血液が付着していた(2)帰宅時、被害者はけがをしていない」など、立証の根拠となる項目が書き出されている。

女性検察官「なお、被告宅以外の血痕については、FさんのDNA型と一致しました。しかし、Fさんは肝硬変のためここ数年、血の混じったつばを頻繁に吐いていました。つまり、Fさんの背中の刺し傷とは全く関係ないことを立証します」

事件当時、K被告は警察に「Fさんがけがをして帰ってきた」と説明していた。自宅近くの路上には血痕が確認され、第三者による犯行も疑われたが、検察側はこの血痕はFさんの病気によるものだと判断した。

女性検察官「次に、現場にいたのは被告とFさんのみで、第三者の犯行ではないことを立証します」

その理由として、女性検察官は「救急隊員が到着時、部屋には鍵がかかっており、密室状態だった」「(K被告の証言にも)第三者が内部に侵入したような言動は一切ない」「ナイフから第三者のDNAが検出されなかった」-ことを挙げた。弁護側は、罪状認否で「第三者の犯行」である可能性も指摘していたが、検察側はこれを否定した。また、Fさん自身の自傷行為である可能性についても、背中の傷の鑑定結果を根拠に否定した。

女性検察官「(傷の状態から)刃物を刺した時と抜いた時の方向は全く同じでした。Fさんは当時、軽度から中度の酩酊状態で、日本酒を4合程度飲んだ状態とみられます。この状態で、自分で同じ方向に抜くのは難しいと考えます。Fさんの着衣にも、自身の左腕を後方に回したようなシワなどは確認できませんでした」

一方、注目の動機については、こう断言した。

女性検察官「被告にはいわゆるSM嗜好があり、本件行為もSM思考プレーの行き過ぎによる犯行と認められ、被告がFさんが刺す動機は十分認められます」

K被告がFさんを刺したとすれば、公判の争点である、Fさん死亡との因果関係はどうなるのだろうか。女性検察官はこう結論づけた。

女性検察官「危険性の高い、被告の突き刺し行為と、Fさんの既往症が相まって死亡したと考えられます」

また、弁護側が「ない」とした責任能力については、こう述べた。

女性検察官「被告は情緒不安定性パーソナリティ障害(衝動型)と性嗜好障害のサドヒズムだが、責任能力に影響する障害ではありません。また、自分で119番通報をするなど、当時、被告に意識障害はありませんでした」

弁護側の主張を真っ向から否定する内容となった検察側の冒頭陳述。続いて弁護側の冒頭陳述が行われる。検察側に引き続き、弁護側の冒頭陳述が始まった。裁判長に促され、女性弁護人が立ち上がる。
6: 08/11/12(Wed) 03:40
女性弁護人「それでは始めます。先ほどK(被告)さんが述べた通り、KさんはFさんを刺した記憶がありません。自分の意思で大好きなFさんを刺すことはない、ということです」

検察側は、衣類の傷の形状や凶器の果物ナイフが自室にあったことなどからK被告の犯行であることを主張したが、弁護人はどういう筋道で無罪を主張するのだろうか。

女性弁護人「本件犯行当時、KさんはFさんから頭や全身を殴られ脳震盪を起こし、記憶を失うほどでした」

K被告は犯行時の記憶がないと主張したが、弁護人は、記憶の欠如はFさんから受けたSM行為が影響していると指摘する。

女性弁護人「確かに2人は異常な性行動をしていましたが、Kさんは傷つけ合うことに性的興奮はありませんでした。SM行為の延長でKさんが刺したとは、簡単には考えられないのです」

弁護人は、Kさんが自分の意思で体を傷つける行為をする性的趣向はなく、Fさんを刺す動機もない-と主張する。そのうえで、裁判に臨むK被告の心境を代弁した。

女性弁護人「Kさんは今でも事件を思い出すことはできません。どうして最愛のFさんが死んだのか、裁判を通じて知りたいと願っています」

続いて弁護人は2人の関係について言及する。

女性弁護人「KさんとFさんとは20歳のころ知り合い、22歳のころ本格的に交際し、半同棲生活を始めました」

10年ほど交際を続けたK被告とFさん。弁護人は2人の性生活を含めた交際状況について赤裸々に語り始める。

女性弁護人「交際を始めて1年くらいすると、FさんはKさんに拳や物で殴るなど、激しい暴力を振るうようになりました」

暴力を振るう性的趣向があったFさん。検察側はK被告がSMプレイの行き過ぎで刺したと主張しているが、弁護側がSMプレイと犯行をどう結びつけようとするのだろうか。

女性弁護人「Kさんが暴力でぐったりしますと、その姿をみてFさんは『E(Kの名前)を傷つけた』『Eに詫びる』と言って、自分自身を殴ったり刃物で傷つけるなどの自虐行為を始めました。そしてそうした行為の後に2人はセックスをしていたのです」

暴力、自虐行為、セックスを繰り返すことが2人の日常的な性行為だったとことを明らかにする。

女性弁護人「事件前にはKさんは強く殴られるようになり、これまでも脳震盪を起こすことがありました。目覚めると体が傷だらけで部屋は散らかり、セックスをした形跡があるが、何があったかわからない、ということが続いていました」

すさんだ生活状態が浮かんでくる。だが、それでもK被告はFさんを愛していた-と弁護側は訴える。

女性弁護人「KさんはFさんの暴力やセックスを受け入れ、生涯をともにするつもりでいました」

被告人席でK被告は、胸を突き出すように背筋を伸ばし、静かに聞き入っている。

これまで、元女優のK被告(32)と被害者のFさん(53)との性生活を冒頭陳述で赤裸々に述べてきた弁護人。続いて陳述は事件当日の状況について言及される。
7: 08/11/12(Wed) 03:41
女性弁護人「(犯行当日の)1月26日午前0時43分ごろ、買い物から帰ったKさんはシャワーを浴び、ベッドに入りました。FさんはセックスをしようとKさんに求めましたが、Kさんはそのまま眠ってしまい、その後の記憶はありません」

K被告はなぜFさんを刺し、そして背中を瞬間接着剤で塞いだのか。いよいよ弁護人の陳述は核心部分へと触れる。

女性弁護人「気が付くと、Fさんと床でセックスをしていましたが、セックスの最中に、Fさんから『E、背中みて』と言われました」

弁護側は、Fさんが「自傷行為」で自分の背中を刺したことを示唆しているようだ。

女性弁護人「Kさんは血も出ていなくたいした傷ではないと思ったので、『切り傷みたい』と言いますと、Fさんから『じゃあ瞬間接着剤塗っておいて』と言われたので、Kさんは背中に瞬間接着剤を塗りました」
 
犯行後に愛する男性をを刺してしまった後悔の念から刺し傷を塞いだのか、それとも“儀式”だったのか、事件発生当時からナゾを呼んでいた意味不明の行動。瞬間接着剤はFさんが求めたものだったと弁護人は言うのだ。弁護人はさらに続ける。

女性弁護人「(瞬間接着剤を塗る行為は)Fさんが『けがの手術でも使っているものだ』と言ってまして、これまでも切り傷ができた際には使っており、この時(犯行当日)も使いました」

弁護側は、日常的にFさんの自虐行為のたびに瞬間接着剤を切り口に塗っていたということを明らかにした。
拘置所生活での疲れを感じさせないほど、ロングヘアーで美貌のK被告は黙って聞き入っている。瞬間接着剤を手術で使うなど、本当に信じていたのだろうか…。弁護側は弁論のまとめに移った。

女性弁護人「記憶がないときに何があったのでしょうか。犯行当日も暴力を受けて脳震盪となりました。この時も部屋の中はめちゃめちゃで、部屋でセックスをしていたという記憶だけです。Fさんの自傷行為など第三者の犯行も否定できませんが、仮にKさんが刺しても善悪の判断ができない状態で、責任能力はなかったと考えます」

脳震盪で記憶がない中での犯行であり、責任能力がなく無罪であると主張する弁護側。さらに、弁護側はFさんが肝硬変を患い血が止まりにくい状態であったことから、刺した行為と死亡との因果関係に疑問を示して冒頭陳述を終えた。
検察側、弁護側の冒頭陳述が終わり、争点が明確になった。ここで裁判長が公判前整理手続きの結果について述べる。

裁判長「この裁判での争点は、被告が起訴状記載の突き刺す行為を行ったかどうか、(刺す行為を)行ったとして、(刺す)行為とFさんの死亡に因果関係があるか、被告に責任能力があるか-の3点になります」

裁判長による争点の確認が行われると、証拠調べの手続きが始まった。検察官は再び立ち上がり、K被告が所属していた芸能プロダクションの経営者の供述調書を読み上げ始めた。
8: 08/11/12(Wed) 03:42
検察官「2月1日にインターネットのニュースで、FさんがKに刺されて死亡し、Kが逮捕されたことを知りました」
検察官はK被告が平成9年に同プロダクションに入り、雑誌のグラビアからVシネマ、写真集の出版など順調に仕事を増やしていったことを一通り説明。そして、供述調書は交際していたFさんとの関係に及ぶ。
検察官「Kが『彼氏と待ち合わせしている』というので車で送ると、ジャガーに乗ったこわもての40歳くらいの男がいた。小さいころ両親が離婚したため『おじいちゃん子で20歳くらい年上の人が好み』と言っていたので、不思議には思いませんでした」

しかし、徐々に様子がおかしくなる。Vシネマの撮影にK被告が顔を腫らして現れたというのだ。
検察官「(K被告は)『ぶっとばしてでも叱ってくれるのは彼だけ。暴力もコミュニケーション』と話していた。理解できなかったが、そんな男女関係もあるのかと思い、Vシネマの監督に謝りました。その後、Kには『付き合うのは避けた方がいい』と言ったら『別れました』と言っていたので、別れたと思っていました」
続いて、プロダクション経営者からみたK被告の性格が語られる。
検察官「天真爛漫で明るく、スタッフや共演者からも人気があったが、向上心が足りず、我慢ができない性格だったので、中途半端な状態で芸能界を引退してしまった。また、普段から『男は寝てみないと分からない』と言っていたので、そういった関係の男性は多かったとは思いますが、プライベートは黙認していました。一匹オオカミ的な性格で、友人などもいなかった。ただ、交際していたのはFさんだけではないかと思います」

続いて検察官は、K被告と長年の付き合いという、友人女性の供述調書を読み上げる。女性は14年前に新宿の洋服店で店員として働いていたときに、客のK被告と知り合った。この女性にはFさんのことを「アンドウさん」などと呼んでいたという。周囲には違う名前や、それをもじった愛称で紹介していたらしい。
検察官「『病気のときにはアンドウさんがみてくれていた』と話していました。殴ったり蹴ったりされており、『別れようかなー』と話していた。携帯も2、3台壊されていました。私が実際にけがを確認したのは、耳の上にできたたんこぶと、目の上に残っている傷です」

友人にも隠すことなく、Fさんからの暴力を話していたK被告。この女性の供述調書によると、交際が親密になってから1年後には暴力もひどくなっていったという。調書の読み上げが続く。
検察官「(女性を含めた)3人で飲んでいるときはそういうこともなかったが、2人だけで飲んでいると殴られていたようです。携帯電話に出ないとか、互いのヤキモチなど些細なことでけんかが始まり、エスカレートしていくうちに暴力が始まったようです。Kも気が強いので『アントンさん蹴ってやった』とか言ってました。最近は殴られたといった話は聞いていません」
さらに検察官は同じ女性から取った別の供述調書も読み上げる。内容は2人の印象についてだ。

検察官「けんかの話を聞いたら、そのつど『Kが悪い』『アンドウさんが悪い』とアドバイスしてました。私からみたら、仲の良い恋人同士でした。一時的に悪口を言うこともあったが、後を引くようなことはありませんでした。(K被告が)『離れようかな』と話したこともあったが、それでも別れずに付き合っていました。何度もけがしているのに。Kが人一倍の寂しがり屋だったことも原因かもしれません」
続いて検察官は、K被告の母親の供述調書を読み上げる。周囲にFさんとの交際について包み隠さず話していたK被告だが、母親には詳しく明かしてはいなかったようだ。事件を聞いた母親は、Fさんとの交際が続いていたことに驚いたという。

検察官「『F』という名前は1月26日に、刑事さんから聞いて初めて知りました。家に戻ってきたEちゃんに聞いたら、『アンドウさんのことだよ』と言ってました。アンドウと聞いて愕然としました。平成13年春ごろ、Eちゃんと暮らしていて、マンションの外から声がして外に出ると、Eちゃんが口から血を流していた。左を見ると男(Fさんが)仁王立ちしていました」

K被告は、母親には「アンドウ」と紹介していたようだ。引き続き、母親がFさんと出会ったときの様子が読み上げられる。以来、母親には「アンドウ(Fさん)=危険な男」という図式が出来上がったという。そして検察官は、事件があった1月26日に自宅に帰ってきたK被告の様子を詳述する。
検察官「26日は部屋のベッドで休ませました。何があったのか知りたく、私が『ママびっくりしている』と言うと『私もびっくりしてる』と答えました。『Fって誰?』と聞くと『ママも知ってる人。アンドウさん』と聞いてびっくりしました。『まだ続いてたの』と声をかけたが、これ以上は混乱させてしまうと思い、朝まで様子を見てました。うなされた様子はありませんでした」

娘に殴られたような跡があり、以前も暴力をふるわれたことがあったので、それにK被告も巻き込まれたのではないかと思ったという母親。検察官は供述調書の読み上げを続ける。
「27日になり『命あるのが不思議なくらい。なんで別れないの?』と声をかけたら『苦しい、思い出したい』と言っていました」
その後、母親はK被告の記憶をたどるため、「言葉を文字にしてみたら」とアドバイスし、スーパーで画用紙を買って渡したという。検察官はそのときにK被告が書いた絵と文字を、法廷の両脇にあるテレビモニターに映し出した。文字は解読できないが、用紙の右側には事件の経過が書かれているとみられるチャート図が、左側には事件現場とみられる部屋の間取り図が書かれ、室内にはFさんとみられる人間が倒れている。

「Fさんは亡くなったということで、本当のことは2人しか分かりませんが、家族がいるので申し訳ないと思います」
親しくしていた人の供述調書が読み上げられる間、K被告は終始うつむいたまま身動きすることもなかった。
9: 08/11/12(Wed) 03:42
法廷では続いて検察官による犯行現場の検証説明が行われた。法廷の両側の壁面に設置されたプロジェクターに、犯行現場となったK被告のマンション自室の見取り図や、マンション4階の平面見取り図などが映し出される。

検察官「防犯ビデオが設置されているのは、オートロック式のエントランス、オートバイ置き場、駐車場ともう1カ所ありますが、それは後ほど申し上げます。血痕が着いていたのは、エレベーターの床面の白い輪っかで示した部分です」

エレベーターの床を上から撮影した写真がプロジェクターに映し出された。事件前にFさんが吐血したとみられる血痕が白い輪っかで囲われているようだが、傍聴席からははっきりと見えない。現場の写真が事件をリアルに伝える。続いて、ワンルームマンションによくある、小さなシンク(流し台)の写真が映し出された。

検察官「シンクの真ん中に黒い鉄製の鍋が見えますが、その中に果物ナイフが入っています。ハンカチとともに入っています」

検察官が「犯行に使った」とする果物ナイフは、刃先を下にして少し濡れた鍋の中に入っていた。そして、底には濡れたハンカチ。果物ナイフが徐々にズームアップされてプロジェクターに映し出されてゆく。被告席のK被告は、検察官が母親の供述調書を読み上げていたときにはずっと下を向いていたが、プロジェクターが映し出されると何度も瞬きをしながら食い入るように見つけめている。長いまつげが揺れているのが、傍聴席からも分かる。

検察官「明らかな血痕は見受けられなかったが、刃体に脂ぎったものが付着されていたと記載されています。さらに洗濯機置き場の状況です。洗濯機に男物のパジャマズボンと白いジャンパーがかかっています」

パジャマズボンとジャンパーは事件当時、Fさんが着用していたものと思われる。
続いて、現場となったK被告の室内写真が映し出される。真っ白な床と壁。家具は少なく、ソファベッドとサイドボードばかりが目立つ。よい部屋だが、寂しい印象の室内だ。
検察官「サイドボードの上には飲食の跡が残っています。ソファベッドの枕の横に血痕が撮影されています。ベランダ側の窓のクレセント錠は施錠されており、ベランダ側からの侵入はありません」
検察官は、第三者による犯行の可能性を主張する弁護側を牽制した。

検察官「続いて被害者(Fさん)の着衣の損傷の様子です。着用していたのは4枚の上着。黒いシャツ2枚、茶色いセーター、白いジャンパーです」

事件当日にFさんが着用していた4枚の上着が、並んでプロジェクターに映し出される。凶器のナイフによる損傷カ所は、背面肩胛骨下左側の同じ位置にほぼ同じ大きさで残っていた。

検察官「続いて果物ナイフに繊維痕が付着しているか、いないかを鑑定した結果です。ジャンパーには表地、裏地、裏生地がありますが、ジャンパーの表生地3本、中綿2本、(聞き取れず)、茶色いセーター10本以上、黒い長袖シャツは構成繊維が類似しているため、正確に分類できないが、あわせて10本以上が付いていました」
検察側は、「凶器は被告宅にあった果物ナイフとは断定できない」とする弁護側の主張を覆そうとしている。

検察官「果物ナイフからは、微弱の血液のようなものが検出されました。刃体全体をぬぐったもののDNA検査をした結果、ぴったりFさんのものと一致しました」
続いて、K被告らの事件前後の行動について記載された捜査報告書の内容の説明だ。男性から女性の検察官に交代した。

検察官「犯行前日の平成20年1月25日、Fさんさんと被告は、20時44分ごろJ駅に行き、○○(スーパー、法廷では実名)などに買い物に行きました。20時44分、U駅の改札を出ています。その後、21時13分、(K被告のマンション)出入り口を通過し、建物内に入っています。翌1月26日午前0時13分、2人は建物の外に出ています」

2人はその後、コンビニエンスストアや弁当屋に立ち寄り、弁当などを購入。午前0時43分に再び帰宅。午前4時45分、被害者1人が外に出た。コンビニ店内で1人で買い物をし、午前5時ごろ、1人で(K被告の自宅がある)マンション4階に戻っている。

検察官「その後、午前6時40分ごろに被告が救急車を呼び、救急隊が6時46分に到着。7時40分に被害者の死亡が確認されている。以上、ビデオ解析結果報告書からまとめたものです」
10: 08/11/12(Wed) 03:42
検察官は続いて、事件に巻き込まれる直前に1人で買い物に出かけたとされるFさんについて、現場マンションの周辺にいた目撃者2人の供述調書の朗読に入った。1人目は、26日午前4時50分ごろ、Fさんが1人で酒を買ったとされているU駅前にあるコンビニエンスストアの店員だ。
検察官「私は1月26日午前4時50分ごろ、常連の男性客に酒類を売った記憶があるのでお話しします。私は店内で飲み物などの補充を行っていましたが、レジによく見かける常連の男性客が立ったので、接客のためにレジに入りました」
店員の供述調書を、わかりやすくゆっくりと読み上げる検察官。続いて、店員が目撃したFさんとみられる男性客の特長を説明していく。
検察官「男性客は60歳前ぐらいに見え、いつも、スタイルが良く美人の30歳ぐらいの女性を連れ、1週間に2、3回は買い物に来ていました。当日は1人で、瓶に入った酒とロング缶に入った酒を1本ずつ買っていました」
「その時、男性客は私に対して『○○はなくていいよ』と話していました。なんと言っていたか思い出せませんが、顔をしかめることもなく、普通に話をしていました」
事件当時、駆けつけた警察官に『夫がけがをして帰ってきた』とも説明していたK被告。事件直前にFさんを目撃した証人の話から、検察官はFさんが外出中に事件に巻き込まれた可能性はないことを証明しようとしているようだ。
検察官「男性客は買い物袋を持って店の外へ出ていったが、ゆっくりと普通に歩いており、千鳥足だったりふらついたりということはありませんでした」
検察官は、スクリーンにコンビニのレジ脇にある防犯カメラの映像を3枚表示した。それらの映像を指し示しながら、調書の朗読を続ける。
「その後、レジの様子が映った店の防犯カメラの映像を見ましたが、(スクリーンを指しながら)その映像でも分かるように、男性客は普通に買い物をしていました。この映像を見て私は思い出しましたが、男性客は『レシートはいいよ』と言っていました。記録では、時間は4時51分前後でした」
「私はその日、午前9時ごろまで店にいましたが、店内の床に汚れはありませんでした。汚れがあれば、すぐに見つけることができますが、血痕などがあった記憶はありません」
Fさんがけがをしていれば、店内の床などに汚れが残る可能性もある。汚れがなかったという証言から、検察官はFさんがその時点でけがをしていなかったことを立証する狙いがあるようだ。続いて、コンビニに向かうFさんを目撃した新聞配達員の供述調書の読み上げだ。
検察官「私は26日午前4時50分ごろ、U2丁目の路上で、白いジャンパーを着た50歳ぐらいの男性を見ました」
検察官はスクリーンに現場の地図を表示し、Fさんとみられる男性と新聞配達員の位置関係を細かく説明しながら、朗読を続けていく。
検察官「いつもは始発に乗るために足早に歩く人しかいない時間帯なので、買い物袋を下げてゆっくりと歩いていたその男性の姿を良く覚えています。時間は午前4時50分ごろだったと思います」
証言は、Fさんとみられる白いジャンパーの男性の行動に移っていく。
検察官「男性は買い物袋を手に提げ、後方から私の方に向かって歩いてきました。『なぜこんな時間にいるのかな』と思ったので、とても印象に残っているのです。あるマンションで新聞配達を終えると、男性はすでに私を追い越して前方にいるのが見えました」
「私は自転車に乗り、次の配達のために自転車をこいだので男性を追い越しました。男性を振り返ると、こちらに歩いてくるのが見え、『自転車をとられたら嫌だ』と思って、その場で男性が私を追い越すのを待ってからマンションに入りました。男性はコンビニの方へ歩いていきました」
証言の信憑性を印象づけるためか、新聞配達員の記憶を細部まで朗読している。
検察官「配達を終えてマンションを出ると、男性は今度はコンビニからこちらに向かって歩いていました。『よく見かけるな』と思いながら男性を見ると、持っていた荷物が増えていたような気がしたので、『コンビニで買い物をしたんだな』と思ったのを覚えています」
そしてここでも、Fさんとみられる男性がけがをしたり、事件に巻き込まれた可能性がないことを証言する。
検察官「その男性は左右にふらつくこともなく、最初に目撃した時と変わらない様子でゆっくりと歩いていました。私の方に歩いてきていたので、話しかけられたら嫌だなと思って急いで次の配達先のマンションに入りました」
「配達を終えて外に戻ると、もう男性の姿は見えなくなっていました。来た道を自転車で帰りましたが、家に着いたのはいつも通り午前5時5分ごろでした。いつもこの時間なので間違いありません」
検察官は、先ほど示したコンビニの防犯カメラに写ったFさんとみられる男性の映像を、再度スクリーンに示した。その映像を新聞配達員に見せたことを説明し、朗読を続ける。
検察官「防犯カメラの画像を見ましたが、私が見た男性は買い物している男性に間違いないと思います。ちなみに、私が男性を目撃していた時間帯に、付近でケンカや言い争いをする声を聞くことはまったくありませんでした」
Fさんの足取りを追うように、事件当時の状況を調書で明らかにしていく検察官。舞台はコンビニ店内や路上から、現場となったマンション室内へと移っていく。
11: 08/11/12(Wed) 03:43
法廷では検察官の防犯カメラ映像の説明が続いている。「Fさんが自ら背中を刺した」、もしくは「(外出先や外から侵入してきたK被告以外の)第三者によって刺された」と主張する弁護側。検察側は防犯カメラの映像を公開することで「第三者」による犯行の可能性を否定しようとしている。
検察官「(防犯カメラの映像時間は)時報より1分48秒進んでいる。このため正確な時間で説明していきます。まずはこれを見てください」
防犯カメラには、事件前にマンションを出るFさんの姿が映されている。白のジャンパーを羽織り、ややうつむき加減だ。白髪も目立つ。
検察官「午前4時45分、外出する映像が映されています。次が午前4時57分の映像です」
12分後、今度はコンビニエンスストアで買い物をしたビニール袋を提げて戻ってきたFさんの映像が映し出される。
検察官「オートロックドアの外で、インターホン越しにだれかと話しています」
映像は送られる。余命半年の末期の肝硬変だったというFさん。防犯カメラは吐血する姿もとらえていた。
検察官「(1秒後の)午前4時58分に2回目のインターホンを押します。この際、見えにくいかもしれませんが、血を吐いています」
さらに映像は続く。その後、オートロックドアが開き、Fさんはエレベータに乗り込んだ後、いったん4階に。そこで降りたが、なぜか1秒後にエレベータに再び乗り込む。1階に降りた後、すぐに4階に戻った。
検察官「以後、Fさんが外出する姿はとらえられていません」
いったん4階でエレベータを降りた直後、何者かに刺されたする反論も予想されるが…。
検察官は「なお2度目に4階から乗って、いったん降りた際、背中に傷などはなく、負傷している形跡はありません」
映像はK被告が救急車に助けを求めた午前6時46分まで早送りされた。そこには、新聞配達員がオートロック外の郵便受けに新聞を入れる様子しか写っていない。
検察官「傷を負っていないFさんが外出してから帰宅し、その後、救急車が到着するまで、マンションに出入りした人はいません」
検察官は第三者による犯行の可能性を否定。女性検察官に代わり、証拠の説明が続いた。
検察官「当直の消防司令からの通報内容の回答書を読み上げます」
「119番入電は平成20年1月26日6時40分。通報者はK(被告)。通報内容は「救急車お願いします。飲んで帰ってきた彼がけがをしているんです。腹か、いや背中かも。場所は大田区U×丁目×番×号×マンション×号室です」
検察官「次に(事件)当日、病院に搬送した救急隊員3人による聴取した内容です」
救急隊員の話からは生々しい事件後の様子が浮かびあがった。消防隊員が通報を受けたのは6時40分ごろだった。指令内容は「Fが飲酒後に背中を負傷した」。
検察官「オートロックの呼び出しを押すと『はい』という声がしてドアが開いた。マンション玄関の床には血が少しついていましたが、×号室まで行く間に、特に異常はあしませんでした」
救急隊員は呼び鈴を2回押し、出てきたK被告はチューリップハットを被り、眼鏡にコート、スウェット姿だったという。「どうしたの」と聞く救急隊員にK被告の第一声は、「寝ていて分からない」だった。ようやく現場に踏み込んだ救急隊員が見たものは…。女性検察官が続ける。
検察官「部屋は暴れたかのように物が散乱しており、室内には2人以外にいませんでした。散乱した物を避けて部屋の奥のベッドに行くと、入り口側に顔を向けたFさんがいました。意識はあるものの、動かしてもあまり反応はありませんでした」
具合を確認した救急隊員だが、Fさんは「うん」とかすかに答えるだけで、目はずっと閉じられたままだったという。
検察官「服装は黒のダウンジャケットに黒のセーター、コートもかけていました。下半身裸で脱糞した跡のほか、20センチ大の血だまりもありました」
防犯カメラの映像に映っていたFさんは白のジャンパー姿で、ベットに横たえられていた救急隊員が見た服装とは異なる。
救急隊員はFさんの脱糞を「とりあえず拭いてあげましょう」とK被告にすすめ、被告は数枚のタオルを取り出して処理したという。その際、救急隊員にこう話した。
女性警察官「K(被告)は『寝ていて起こされたら、背中をけがをしていた。酒を飲むといつも暴れるんです。暴れて嫌がるのを何とか、いつものように瞬間接着剤で止血したんですが、血が止まらずに通報しました。何とかしようとしたんです』と言いました」
K被告は前を見据えたまま聞き入っているようだ。午前の審理が終わり、午後から証拠調べの続きや証人尋問が行われる。

午後1時15分、法廷が再開した。午前に引き続き、検察官が証拠について説明する。男性検察官が死亡したFさんの主治医の供述調書を読み上げる。
検察官「甲7号証です。消化器内科が専門ということです。モニターをごらんください」
法廷の大型モニターに、Fさんの入院診療記録が表示された。Fさんは肝硬変のため、平成19年10月9日から24日まで入院。肝硬変は末期症状だったとみられ、検察側は冒頭陳述でFさんの死因について、「K被告の刺した傷と既往症が相まって死亡した」と指摘している。主治医は当時の病状について、検察官にこう話したという。
検察官「Fさんはアルコール性肝硬変の末期で回復の望みはなく、徐々に悪くなるという状況でした。採血データは末期症状の状態で、余命は飲酒をやめてもせいぜい5年程度。やめなければ1年でした。さらに、動脈瘤などで直ちに死亡する可能性もありました」
主治医によれば、血液を固める働きのある血中血小板の数が健康な人が20万~30万あるのに対し、Fさんは入院時に2・9万、退院時でも9・8万しかなかったという。
検察官「Fさんの数値は極端に少ないわけです。この数値から、Fさんの体質は出血しやすく、いったん出血すると止まりにくいといえるわけです。退院後に飲酒していれば、退院時よりもよけいに出血しやすくなっていたと思います」
主治医はこうした症状についてFさんの姉に説明。その後、Fさんから「一緒に住んでいる仲だから」と、K被告にも説明するよう求められたという。検察官は主治医の供述を引用した。
検察官「『Fさんは肝硬変で、末期の状態です。退院後も酒を飲み続ければ余命は1年あるかどうか。ガンもできやすく、出血しやすい体質です。退院後も酒は飲ませないように』と説明しました」
Fさんと長年支え合っていたというK被告は、この宣告をどのように受け止めたのだろうか。主治医は当時の様子をこう振り返る。
検察官「『この際、Kさん(K被告)からは特に何の質問もありませんでした。取り乱したりすることもなく、いつも通りケロっとしていたという記憶があります』…」
ここで別の男性検察官に交代。K被告の部屋やマンション周辺から見つかった血痕の鑑定書について、説明した。
検察官「マンション1階のエントランス床、エレベーターの床、被告宅内部から採取したものには、すべて人血の混在が認められました。エントランス床、エレベーター床のものはFさんのDNA型とぴったり一致。被告宅内部のものは、Fさんの血液型と同じAB型でした。唾液の混在は、エントランス床、エレベーター床には認められましたが、ベッドからは認められませんでした」
「部屋内部以外の血痕は、Fさんが病気により吐血したもの」とする検察側の主張を裏付ける証拠だ。
ここで女性検察官に交代し、遺体の司法解剖を担当した医師の報告書を取り出した。
検察官「死因は、左背部刺切創による肺損傷に起因する失血性ショックです。創傷は左背部を貫通しており、比較的ゆっくりとした出血が続いて失血性ショックになったものとみられます」
次に裁判長が、K被告に証言台へ座るよう指示。K被告は小さくうなずくようにして、ゆっくり移動した。どうやら遺体の写真が、証言台に設置された小型モニターに表示されるようだ。
検察官「左背部に長さ2・2センチ、幅0・9センチのほぼ水平方向の傷が認められます」
証言台のモニターの写真は頻繁に切り替わっているが、どんな写真か傍聴席からは見ることができない。
検察官「傷をくっつけた際の、長さは2・4センチでした」
K被告は事件直後、自ら刺したFさんの背中の傷を瞬間接着剤で塞ごうとしていた、とされる。混乱していたのか、止血しようとしていたのかは不明だが、この動機についても注目が集まっている。
検察官「肺の中には、2・5センチにわたる貫通創が認められます」
果物ナイフをFさんの背中に深々と突き刺した瞬間を思いだしているのだろうか。愛した人の変わり果てた姿が映っているだろう画面に、K被告はじっと見入ったままだ。
12: 08/11/12(Wed) 03:43
法廷では、検察側の提出した証拠についての説明が続く。司法解剖を担当した医師の報告書の内容について、女性検察官がK被告に厳しい目線を向けながら読み上げている。
中央の証言台前のいすにかなり浅めに座わり、検察官の示すモニターを見つめているK被告。モニターにはFさんの体についた傷が映し出されている。肝臓が損傷した写真などもあったが、K被告は腰を反るように背筋を伸ばし、微動だにしないで見つめる。
検察官「(Fさんの)顔面に表皮剥奪、その他体全体に表皮剥奪が認められます。凶器の種類については片刃の刃物で、皮膚面に水平に(刃体が)入っています。傷口が2・4センチなので、2・4センチ以下の薄くて小さい刃物で果物ナイフが近いです」
K被告は背中まで伸ばした長い髪を掻き上げることもなく、両手を膝の上に置いたままだ。
検察官「(Fさんの)顔面の表皮剥奪は爪の可能性が高いです」
被害者が襲われた際に抵抗して遺体に爪の跡がつくことがあるが、FさんはSMを趣向していただけに、いつのものかは判然としない。続いて検察官はFさんの既往症について述べる。
検察官「肝硬変と認められ重症であります。末期の症状である腹水の貯留が認められないが、専門医が血小板の数値などから末期というのであればそうでありましょう」
Fさんの刺し傷が浅かったが、行動能力はどれぐらいあったのだろうか。報告書では受傷後のFさんの行動について言及していた。
検察官「血管が切れていないこの程度の損傷では、通常は死なない可能性が高いです。重度の肝硬変を患い、処置が遅れたので出血したと思われます。損傷後は、しばらく行動能力はあったのではないかと思われます」
Fさんは刺された後に、どれくらい生存し、そして何をしたのか…。
検察官「Fさんの傷であれば、10~20分で死亡することは考えにくいです。(分単位ではなく)時間単位で死亡したであろうと思われます。受傷後1時間であればセックスは可能であります」
弁護側の主張によるとFさんはK被告に暴力を振るい、被告に謝罪の意味で自傷行為をし、そしてセックスをするというのが性生活のスタイルだったが、この時もセックスをしたのであろうか。解剖所見からは「可能」なのだが…。
検察官「ただし、呼吸は苦しかったはずです。血中アルコールから判断するとFさんは日本酒なら4合程度を飲んでおり、軽度から中度の酩酊状態だったため、痛みは和らいでいたとみられます」
解剖所見では弁護側の主張にも合致すると思われるが、検察官は食い違う点も主張する。
検察官「体の柔らかい部分を刺しているので力一杯刺したものではないと思われます。Fさんの体には1カ月くらい経過したひっかき傷以外には、古い傷はありませんでした」
度々自傷行為をしていたという弁護側の意見とは真っ向から対立する。
検察官はここで男性検察官に交代。D警察署で撮影され、K被告の全身にできた皮下出血の跡の写真がモニターに映し出された。こめかみ付近には2カ所ほどあざ程度の皮下出血があったが、約20カ所あるあざは腕や手、足など頭以外が多かった。検察官は脳震盪を起こすほどの暴力はなかったと主張したいようだ。
検察官はこの後、精神鑑定を行った医師に対する弁護側、検察側の質問内容について読み上げた。

証拠調べも大詰めだ。女性検察官が立ち上がり、犯行に使われたとされる果物ナイフとジャンパーが被告人席のK被告に示された。最初に提示されたのはナイフだ。検察官が法廷の中央まで歩み寄り、ナイフを掲げると、刃の部分が蛍光灯に反射し不気味に輝いた。黒い柄の部分は、鑑定のために削られている。
13: 08/11/12(Wed) 03:44
検察官「これはあなたのものですか」
K被告「家にあったものならば、私のものです」
犯行に使われたとみられる凶器を見せられ、か細い声で答えるK被告。続いて示されたジャンパーはベージュで、背中の部位には事件でできた穴があいていた。いずれも裁判長に手渡されると、検察官の証拠調べが終了した。
裁判長「続いて証人尋問に移ります。検察官と弁護人はこちらに来て下さい」
双方を呼び寄せ、証人尋問の手順などを打ち合わせているようだ。その数分後、証人の男性が入廷する。男性はFさんの司法解剖を行った医師だ。法廷で偽証しないことを宣誓すると、証人席に座り別の女性検察官の質問に答え始めた。
検察官「被害者のFさんの解剖をした解剖医ですね」
解剖医「はい」
検察官「簡単に経歴と司法解剖の経験を教えて下さい」
解剖医「平成4年にK医大を出て…(中略)現在はT大の教授です。解剖は平成5年から行っており、今まで450体の解剖、その7割で鑑定書を作成してきました」検察官「Fさんと同じような刺創は?」
解剖医「そのうちの1割程度です」
検察官は席を立ち、証人に捜査報告書を示す。
検察官「これは検察官が先生から所見を受け、死因の意見をうかがったもので、内容を確認して署名してもらいましたね?」
解剖医「はい」
検察官「事実として記載されている部分ですが、これは実際に解剖して見分した内容ですね」
解剖医「はい」
検察官「意見の部分ですが、これは先生の経験にもとづいて意見したものですね」
解剖医「はい」
検察官「Fさんの左肺の刺創は自傷によるものか、第三者によるものでしょうか。先生のご意見はいかがでしょう?」
検察は争点の1つでもある「Fさんを刺した人物」について、本人ではなく、他人によるものであることを、解剖医の話から立証する狙いだ。
解剖医「背中にほぼ水平方向にきれいな切創があり、(刺したのが)本人か他人かと聞かれると、本人では難しい場所。他人の可能性が高いです」
検察官「ほかに他人の可能性を示すものはありますか」
解剖医「体が動くと傷口がギザギザになります。なので刺してすぐ抜いたと考えられ、自分でやるのは難しいと考えられます」
検察官「Fさんは刺されたとき、動いていなかったということですか」
解剖医「傷口からすると動いていないと思います」
検察官「第三者である根拠はありますか」
解剖医「傷からは刺してすぐに抜くという一瞬の出来事だったと思われます。自分でやっていたら痛みもあり、抜くときに体が動いてしまいます」
検察官「アルコールが検出されたことは関係しますか」
解剖医「血中からは1・8ミリリットルのアルコールが検出されており、ちょうど中度の酩酊状態で、日本酒なら4、5合を飲んだ状態。手が震え、正確な動作は難しいでしょう」
検察官「事件前、Fさんはコンビニに行っており、そのときはふらついていないという証言もあります。そういう状態でも(自分で刺すことは)難しいですか」
解剖医「足取りなどは体質によっても違いますが、それでも手を使った細かい動作は影響が出るでしょう」
検察の思惑通りの答えが引き出せているようだ。K被告は被告人席で背筋を伸ばし、まっすぐ正面を見据えている。落ち着いた様子だ。

解剖医に対する検察官の尋問は、死亡したFさんが遺体に残っていたような傷を「自分で付けることが可能か、否か」-に集中した。弁護側が主張するFさんの「自傷行為」が不可能であるという言葉を、検察は改めて引き出そうとしている。
検察官「Fさんが他人にナイフを持たせて刃先に当たりに行ったり、柄の先を床に固定させて自ら刺したということは考えられますか」
解剖医「(刃が刺されば)痛みがあったりして、体がねじれたりするので難しいでしょう」
検察官「意識がもうろうとした状態で(K被告)がFさんを刺して、遺体に残っていたような傷をつくることができますか」
解剖医「まず、しっかり持てないでしょう。また、抜く時には刃先の動きが変わってしまっています」
検察官「やはり(Fさんの傷のように)、こんなきれいにはならないということですね」
解剖医「はい」

検察官の尋問に答える形で、解剖医はFさんの自傷行為や、K被告が意識がもうろうとした状態でFさんを刺したとする弁護側の主張を否定していく。検察官はさらに質問する。

検察官「ふらついた状態では、今回のような傷はできるのですか」
解剖医「やはり手元が不用意に動くので、今回のような傷は難しいでしょう」
検察官「(致命傷となる傷口以外に)小さな損傷がありますが、そのようにしてできるのでしょうか」
解剖医「肺の横に小さな傷が同一直線上に並んでいます。肺は膨らんだりしますから、抜くときか刺すときにかすったと考えられます」
検察官「小さな損傷と被害者がじっとしていたことは、矛盾しないのですか」
解剖医「肺は呼吸によって動く。その関係で2カ所、切れてしまうことはあります」
検察官がポリ袋に入っていた「凶器」の果物ナイフを取り出して、解剖医に示した。凶器を見てもK被告はほとんど動かず、じっと下をみたままだ。 
検察官「刃体9・8センチ、幅2・1センチ。この果物ナイフは凶器と考えて矛盾はありませんか」
解剖医「直線上2・2センチの傷がありました。抜くときと刺すときに(傷は)広めになるので、問題はありません」
検察官「こちらのナイフは凶器と考えられますか」
傍聴席からはよく見えないが、別の刃物の写真を解剖医に示しているようだ。
解剖医「刃先が4センチですね。傷口の奥行きは8センチですので、刃の長さが足りないと考えられます」
検察官「先端の欠けた洋包丁は本件と関係がありますか」

検察官は、K被告の自室内にあった果物ナイフ以外の刃物が凶器ではないことを徹底的に立証する構えだ。

解剖医「(刃物の)先端が欠けていれば、傷口に不正形が生じます。本件の凶器としては合わない。普通の文化包丁の刃の長さからみてもっと長い傷ができるはず。ご遺体の傷とは合致しません」
検察官「見ていただいた中では、果物ナイフが凶器として合致するということですね」
解剖医「はい」
14: 08/11/12(Wed) 03:44
ここで検察官は質問の内容を変える。

検察官「ところで、(凶器の)刃先はすぐに抜けたのでしょうか」
解剖医「傷口がきれいなので、すぐに抜けたと考えられますね」
検察官「先生がこれまでに解剖された中で、背中に刺し傷のある遺体はどれくらいありましたか」
解剖医「5例ぐらいです」
検察官「そのうち他殺ではないものは?」
解剖医「ありません」

検察官の質問はFさんの死因に移った。

検察官「Fさんの死因は、左背部刺切創による肺損傷に起因する失血性ショック死でいいですか」
解剖医「はい」
検察官「Fさんが死に至る経緯を簡単に説明してください」
解剖医「肺の傷はそんなに大きくない。胸腔内に血液がたまっていた。血液の半分がなくなると、おそらく人間は死ぬ。(Fさんは)その前に血圧が下がり、状態が悪くなったと考えられます」
検察官「(Fさんの傷は)『大きな血管を傷つけている訳ではないので、普通の人では死亡しない可能性が高いが、絶対に死なないとは言えない』と先生はおっしゃりましたが、刺した場所が同じでも、少しずれれば心臓を刺してしまうこともあった。たまたま、大きな血管を刺していなかったということでよろしいでしょうか」
解剖医「はい」

検察官は果物ナイフを凶器とする立証に尋問を戻す。

検察官「先ほど見ていただいた果物ナイフの刃の部分から、FさんのDNA型と一致するDNAが検出された。それはどういう意味を持ちますか」
解剖医「(刃物に)付着していた血液と、FさんのDNA型は同一。付着の血液はFさん由来の血液といえます」
検察官「DNA型の一致はどれくらいの確率ですか」
解剖医「100億以上のうちの1人です」
検察官「ナイフの柄の部分には、Fさんと被告のDNAが混在していた。これはどういう意味ですか」
解剖医「この2人のものとほぼ断定できる。2人以外の血液が入ると合わない」

続いて弁護側の反対尋問が始まった。まずは死因に対する詳細な質問からだ。

弁護人「出血性ショックと失血死はどういう違いがあるのですか」
解剖医「出血性ショック死を経過して最終的に失血死に至ります」
弁護人「もう少し詳しく」
解剖医「出血して心臓から血液が出て行くと、血圧が維持できなくなる。これがショックの状態」
弁護人「半分ぐらい体内の血液がなくなると人は死ぬ。これは失血死ですか」
解剖医「はい…。まあ、何%で亡くなるかというのは個人差がありますが…」
弁護人「Fさんはどの程度、血液はなくなっていたのでしょうか」

弁護側は必死の“反撃”を試みているようだ。

法廷では、解剖医に対する弁護人の尋問が続いている。解剖医が『Fさんの傷は自傷による可能性は低い』と証言したことについて、弁護人はさまざまな角度から質問を投げかける。
弁護人「Fさんは肝硬変だったようですが、普通の人より血が止まりにくい状態だったのですか」
解剖医「はい、そう思います」
弁護人「Fさんの傷が自傷である可能性についてうかがいます。『自傷ではない』とおっしゃったのは、傷の状態で判断されたのですか」
解剖医「はい」
弁護人「Fさんの傷は、背中といっても左脇に近いですね。そうすると、手を回して刺すことはできないと」
解剖医「…うーん、手を大きく回せば刺せない位置ではないと思いますが」

解剖医は身ぶりを交えながら説明した。

弁護人「では、傷口が真ん中だったら自分で刺せる可能性はなくなりますか」
解剖医「たとえ真ん中でも、手を大きく回せば刺せない位置ではないと思いますが…」
弁護人は、自分で刺せる位置に傷口があることを、解剖医の口から説明させたかったようだ。次に、傷口の具体的な状態へと話が移る。
弁護人「先ほど、『傷口がきれいなことなどから自傷は難しい』とおっしゃっていました。傷口はきれいだったため、自分で刺したならそんなにスッとは抜けないということですね」
解剖医「はい、そうです」
弁護人「Fさんは当時アルコールが入っていたようですが、アルコールが入っている人は痛みが和らぐのではないですか」
解剖医「そうですね」
弁護人「(解剖医の)供述調書にも『Fさんは、軽度から中度の酩酊状態だったため、痛みは和らいでいた』とあります。Fさんは当時、酔っていたんでしょうか」
解剖医「そのようです」
弁護人は、Fさんが酔っていたために痛みを感じず、自分で刺しても他人が刺したような傷ができる可能性もあったことを法廷に印象づけようとしているようだ。今度は、Fさんを傷つけた凶器へと話題が移った。
15: 08/11/12(Wed) 03:44
弁護人「先生は先ほど、『Fさんは果物ナイフで刺された可能性が高い』とおっしゃいました。ここで、部屋にあったほかの文化包丁の写真を示します」
「刺し傷の幅が2・5センチで、果物ナイフと一致していると話されていましたが、この写真の文化包丁の幅が2・5センチ以上あるということは、写真ではわかりませんよね」
解剖医「はい」

弁護人は、写真だけではサイズは分からないということを明らかにしようとした。続いて、犯行後の現場マンションの台所を撮影した写真を解剖医に示し、再び質問を投げかける。
弁護人「食器かごの下に、はさみのようなものがものがありますね」
解剖医「はい」
弁護人「このはさみが凶器になった可能性はありますか」
解剖医「はさみの先の形状によりますが、ないとはいえません。ただ、傷口のみね幅(凶器の厚さ)は1ミリで、(包丁より刃が厚い)はさみが使われた可能性はあまりないと思います」
弁護人「しかし、尖っていて薄い刃のはさみだったら、凶器になった可能性もあるということですね」
解剖医「ものすごく特殊なはさみを持ってくればですが…」

『はさみも凶器になりうる』ことを説明させようとする弁護人に対し、少し笑いながら答える解剖医。弁護人は、質問をFさんの傷口に戻した。

弁護人「Fさんの傷口は、Fさんが自分から動いてこのような傷口になる可能性はありますか」
解剖医「あると思います」
弁護人「では、誰かが刃物を持っていて、刺さった後に自分から引き戻るということは」
解剖医「相対的な動きですから…」

弁護人の質問の意図がわかりにくかったのか、答えに窮する解剖医。すかさず検察官が補足で質問する。

検察官「今の質問は、Fさんが自分から後ろにバックして、第三者が持っていたナイフに当たりに行った可能性があるか、という質問だと思います。可能性はあるのですか」
解剖医「ないとはいえませんが、難しいと思います」
検察官「被告の左手の傷ですが、これは果物ナイフによる傷の可能性が高いのですか」
解剖医「そうです」

弁護人、検察官の質問が終了し、続いて裁判官の補足質問に入った。

裁判官「先ほど、いくつか『自傷行為ではない』と説明していました。そうする理由について教えてください」
解剖医「まず、Fさんの傷口がきれいで、刺したのと同じ角度で引き抜かれたはずで、自分で刺したら痛くてぶれるはずなので、自傷とは思えません。あと傷口が背後にあるということです」
裁判官「お酒を飲み、痛みが弱まっているようですが、どのぐらい弱まっていたのですか」
解剖医「個人差があるので何とも言えませんが、痛みを感じないほど酔っていたとすれば反対に手が震えますから、あんなにきれいな傷にはならないと思います」
裁判官「Fさんの感じた痛みは、どのぐらいの痛みなのですか」
解剖医「皮膚の神経が集中しているところに刺さりましたから、かなりだと思います。また肺に達しているので、息苦しさもあったかもしれません」

裁判官が質問を終え、裁判長の質問に入る。背中に自ら刺せるのか。裁判所側が争点を整理しようとする質問が続く。

裁判長「被害者の体型は?」
解剖医「そんなに変わったという感じではなく、中ぐらいかと…。太っているわけでもなく」
裁判長「証拠として出されたのもには身長が書いていませんでしたが」
解剖医「そこ(身長)までは覚えていませんが、鑑定書には書いています」

手が長いといった、自分で刺せるなどの身体的特徴がないのかを確認しているとみられる。証拠として添付された写真の見方の解説を解剖医に求めた後、話は「傷口」へ。

裁判長「おおよその感じでいいのですが、脇の下からどれくらいの位置に傷があるのですか」
解剖医「15~20センチ下のところ。あばら骨には10本の骨があり、下から2~3番目の間に位置しています」
裁判長「6センチの深さとあるが、大きな血管はあるのですか」
解剖医「あと5~6センチ背中の内側ならあるが、(Fさんの)傷口ならありません」
裁判長「この深さで心臓に達するのですか」
解剖医「まっすぐ向かえばあります。ただ、それも(Fさんの傷より)内側になければいけませんが…」

裁判長は最後に、DNA型の鑑定結果についての信憑性について尋ねた。

解剖医「有名なメーカーの検査キット(器具)を使っているし、世界的にも同じ方法がとられています」

解剖医の尋問は終了した。K被告はカバンを抱えて退廷しようとした解剖医に深々と頭を下げた。15分の休憩後、精神鑑定を実施した医師の尋問が行われる。
  
16: 08/11/12(Wed) 03:45
15分の休憩を挟んで再開された公判。すでに午前中から通して4時間余りが経過しているが、元女優のK被告は疲れも見せず、ずっと背筋をまっすぐに伸ばした姿勢を崩さない。
続いて出廷した証人は、K被告の精神鑑定を実施した女性医師。ここでもK被告は、深々と頭を下げて証人を出迎えた。
検察官「これまでの鑑定歴をお聞かせください」
鑑定医「起訴前(の被告に対する鑑定)が10件、公判中が3件、医療観察が10件と記憶しています」

次に、24ページに及ぶという女性鑑定医がまとめた鑑定書が示される。
検察官「ここ(鑑定書)に書かれてあるのは、(鑑定医としての)経験と見識において、ありのままに記載したものに間違いありませんね」
鑑定医「(よりはっきりした口調で)はい」
検察官が鑑定書の写しを裁判官や弁護人に配布し、本格的な質問を始める。検察側はK被告が犯行時、意識がはっきりしており、鑑定結果通りに責任能力があったと印象づけたいようだ。
検察官「Fさんを刺したときの被告の意識は鮮明だったのでしょうか」
鑑定医「鮮明でした。それは被害者(Fさん)のナイフの切り傷から『鮮明じゃないとできない』と判断しました」
検察官「それはどういう意味ですか」
鑑定医「分かりやすく言えば、注意力や判断力がないということは、歩行もできないくらいグラグラしていることになります」

Fさんの背中の傷口は1カ所で、無理に抜いた跡もなかった。鑑定医は意識が鮮明でないと、傷口がもっとひどい状態になっていると言いたいようだ。鑑定医は捜査報告書の中にある数枚の写真をみて、その傷口の状況を知ったという。検察官は何度も傷口の所見を確認する。
検察官「写真を見て、どう思いましたか」
鑑定医「何度も言っていますが、表面はもちろんのこと、(背中の)中に達している傷口もクリア(鮮明)でした。精神的にブレがないというか、あるならもっとぐちゃぐちゃになっているだろうと思います」
精神鑑定にもかかわらず、本人に精神状態を聞くのだけではとどまらず、医師が傷口にまで注目しなければならなかった理由は何なのだろうか。検察官が、その素朴な疑問を尋ねた。

検察官「傷口に着目したのはどうしてですか」
鑑定医「本人が覚えていないとしたので、記憶を探りました。ただ断片的には覚えているので、(それをつなぎ合わせると、SM行為での)脳しんとうによる『せん妄』だと判断しました。そうしたとき(せん妄状態時)に意識が鮮明だったか、そうではなかったのかを裏付ける物的なものとして、写真に着目しました」
検察官「せん妄というのは?」
鑑定医「目がうつろで心身ともにフラフラの状態のことです」
検察官「(K被告は)せん妄状態ではなかったのではないですか」
鑑定医「せん妄といっても、さまざまな状態があります。要は精神的に定まらないということです。フラフラな状態だけではなく変化を続け、意識度が高いこともある」
検察官「意識度が高いときは、どういう状態なのですか」
鑑定医「自分の意思に従って、どんな行動でもとれます」

どうやら鑑定医は、K被告はせん妄状態にありながらも、意識度が高い状態にあったと言いたいようだ。その根拠として、傷口がぐちゃぐちゃになっていないFさんの写真の存在を挙げたという。
検察官「『意識度が低い状態』と『高い状態』があるのですね。分かりやすい例えで言えば、どんな状態なのでしょうか」
鑑定医「よくボクシングの選手は頭を殴られて脳しんとうを起こす。フラフラして倒れるときもあるが、比較的はっきりとした意識があって相手にパンチを浴びせることもできる。こんな例えでどうでしょうか」
検察官「意識が下がり続けることはないのですか」
鑑定医「続くことはないでしょう」
検察官「もうろうとした状態でも、まとまった行動ができるということですね」
鑑定医「もうろうは一時的なもの。今回のようなケースは、一見まとまった行動をとっており、軽いと思われます。百歩譲って、一見まとまった行動を取っていても無意識や無目的な状態だと、被害者は不意を突かれた形になり、抵抗する痕があるはずです」

鑑定医は意識的にK被告が刺したと暗に示したばかりか、FさんもSM行為の延長線で受け入れて刺されたとするような所見を述べた。K被告は鑑定医の意見にも動じることなく、静かに姿勢を伸ばし続けていた。

法廷では、K被告の精神鑑定を行った女性鑑定医に、男性検察官が質問を続けている。Fさんを刺した当時のK被告の精神状態について、鑑定医は「心身ともにフラフラだった」としながらも「意識は鮮明だった」と判断。責任能力の有無をめぐる重要な証言となりそうだ。
検察官「犯行当時、被告を『性嗜好障害』と判断した理由は何ですか」
鑑定医「彼女の供述からです。(Fさんと)お互いに苦しめたり痛めあったりして、性的喜びを得られることを反復して行っている、ということで判断しました」

鑑定医は、2人をともに性嗜好障害のサドマゾヒズム、つまりSM嗜好があると鑑定している。
検察官「責任能力への影響はありますか」
鑑定医「ありません」
検察官「『情緒不安定性パーソナリティー障害』と判断した理由は何ですか」
鑑定医「これも供述などから、彼女は非常に情緒不安定で、自尊心、恐怖心が大きいということからです」
検察官「責任能力への影響はありますか」
鑑定医「ありません」
検察官「このほかに、心理検査も実施しましたね。どのような検査をしましたか」
鑑定医「ロールシャッハテストなど、人格を見るテストと知能検査をしました」
検察官「心理検査はどのような結果でしたか」
鑑定医「抽象的な問題では、問題解決能力がありますが、具体的な問題では問題解決能力はありません」

鑑定医は専門的な説明に続けて、K被告の性格をわかりやすく解説した。
鑑定医「つまり、現実回避的で自己陶酔型。衝動を抑えられません。現実と空想の区別がつかない、というのが特徴的でした」
検察官「精神病を疑わせるような所見はありましたか」
鑑定医「あ、それはありませんでした」
検察官「責任能力についてはどう考えますか」
鑑定医「精神病的所見もなく、動機も了解できるのではないかと考えます」
検察官「動機は何だったのでしょうか」
鑑定医「性嗜好障害のSMプレイの延長上の不測の事態です」
検察官「そう判断した理由は何ですか」
鑑定医「(K被告)本人が119番通報をしており、鑑定留置中の、ほかの患者さんや私やスタッフへの対応でも、責任能力がないのではないかと疑わせるところはみじんもありませんでした」

検察側の冒頭陳述に沿う証言をした鑑定医。ここで質問者が男性弁護人に交代した。どうやって検察側の主張を崩すのかが注目される。
17: 08/11/12(Wed) 03:46
弁護人は鑑定医の経歴などを確認した後、K被告への問診内容について尋ねた。
弁護人「Kさん(K被告)は、Fさんとの性生活についてどのように話していましたか」
鑑定医「『10年のお付き合いの中で、当初は普通だったがやがて暴力が増えた。いつも(暴力が止むと)最後にセックスがあり、それは“ご褒美”だと思っていたが、やがてFさんの方が、暴力がないと興奮できないということが分かった』と話していました」
弁護人「被告は暴力について、どう話していましたか」
鑑定医「『殴られて非常に痛いが、その後のセックスが非常に快感』と話していました」
弁護人「Fさんについてはどのように診断しましたか」
鑑定医「彼女(K被告)からの陳述に基づきますが『通常の行為では興奮できない。彼女に暴力をふるい、いろいろなプレイの道具を使うと興奮できる』と聞きました」

弁護人「Fさんの自虐行為についてはどうですか」
鑑定医「お互いにSとMなので、自分も痛めつけることで快感を得られたのだと思います。Fさんもパーソナリティ障害なので、自傷行為の延長だと考えました」
SM嗜好があったという2人だが、弁護人はその私生活についてより詳しく質問していく。
弁護人「被告のFさんに対する暴力についてはどうですか」
鑑定医「『(Fさんが)殴りかかってきたら最初のうちは防御態勢で構え、ある一定の時間(が経過したら)でやり返す』と聞いています」
弁護人「サドマゾヒズムというのは、どういうものなのでしょうか」
鑑定医「相手を苦痛に追いやったり、辱めたり、逆に痛めつけられたり、辱められたり、という両方の状態です」
弁護人「なぜ、被告にサディズム的要素があると考えたのですか」
鑑定医「相手に暴力をふるうことで相手が興奮するのを見て、自分も“痛気持ちいい”快感を感じる、ということで(判断しました)」
弁護人「Fさんはサドでありマゾであるということですか」

鑑定医「はい」
弁護人「K被告についても、Fさん(の暴力)に抵抗するから、サドでありマゾであるということですか」
鑑定医「抵抗もするし、彼に協力して合意の元でそういうことを行うからです」
K被告の鑑定書と見られる資料を引き合いに出し、弁護人が質問した。
弁護人「比較的、Fさんがサドで、被告がマゾということを書いていらっしゃるように受け取れるのですが…」
鑑定医「どちらかといえば、Fさんが攻撃することが多かったと思います」
弁護人「Fさんの顔を(K被告が)携帯で殴ったり、指をベルトではさんでひっかけた、という話は聞いていますか」
鑑定医「はい。彼が一連の(暴力)行動の後、彼女に携帯を持たせて何回か(Fさんの)目を殴らせ、その後、眼科で手術することになったと聞きました」

周囲にとっては驚くべきエピソードも、2人にとっては愛をはぐくむ行為だったのだろうか。K被告は私生活が赤裸々に語られるやり取りにも動揺することなく、背筋を伸ばして姿勢良く座っている。

法廷では、精神鑑定を行った女性鑑定医への反対尋問が引き続き行われている。弁護側は、女性鑑定医の問診時の記憶についても質している。

弁護人「Fさんの(事件当日の)行動についてはどの程度覚えていますか?」
鑑定医「2人で待ち合わせて買い物をして、彼女(K被告)のマンションに行き、買った物を食べてテレビを見ながら、確かハワイ行きの航空券の予約をパソコンで時間を費やしているうちに、Fさんが飲み足りないということで、近くのコンビニエンスストアに行ったと」
弁護人「Fさんは午前4時45分ごろにマンションから出て行ったということですが、この点の記憶は?」
鑑定医「あります」
弁護人「Fさんはなぜマンションから出て行ったと考えますか」
鑑定医「暴力があり、(K被告が)脳震盪で意識がないため、クーリングダウン(冷却期間)の目的で離れたと…」
弁護人「Fさんが洗濯物を持って行ったということは知っていますか」
鑑定医「知りません」
弁護人「(Fさんが)マンションに戻ってきたのは精神科医としてどう考えますか」
鑑定医「クーリングダウンして帰った後、セックスするというパターンがあるが、Fさんは家に入るか入らないか躊躇していたと考えました」
弁護人「背中の傷の原因は?」
鑑定医「ナイフによる切り傷と考えますが」
弁護人「Fさん自身による自傷の可能性は?」
鑑定医「(傷の位置が)自傷でできる場所でないため最初から考えませんでした」

はっきりとした口調で言い切る女性鑑定医。繰り返しの質問に多少苛立ちもあるのだろうか。

弁護人「傷がFさんの自虐行為によるものとは考えませんか」
鑑定医「Fさんが頼んだということですか」
弁護人「そうです」
鑑定医「それは考えました」
弁護人「なぜ?」
鑑定医「抵抗の跡がないことと、(性的な)プレイで(Fさんが)刃物に興奮するということなので、Fさんが頼んだ可能性はあると」
弁護人「朦朧状態は『せん妄』の中のひとつでしょうか」
鑑定医「せん妄は大きな状態で、朦朧はその中にあります。朦朧のほうが症状は軽いかもしれません」
弁護人「朦朧の状態が顕著に出た場合、自分の行為の善悪を判断する能力を欠くことはありますか」
鑑定医「犯行時点では意識が清明であると考えるので、(判断能力が)ないということはないです」
弁護人「なぜ?」
鑑定医「犯行時点で意識が清明でなければ、できる傷口ではありません」

犯行時には記憶がなく、無罪であった-と主張する弁護側にとっては、なんとしても犯行時は意識が清明ではないと聞き出したいところ。だが、鑑定医は明確に否定した。

弁護人「犯行時に意識が清明な根拠は傷口といいますが、せん妄状態では果物ナイフは握れない?」
鑑定医「意識が混濁であればしっかり握るのは不可能と思います」
弁護人「せん妄状態で興奮した場合でもナイフは握れないと?」
鑑定医「集中力や注意力が散漫し、ナイフを握っても次の段階へと行動することは不可能と考えます」
弁護人「不可能とは?」
鑑定医「刺したとしても(ナイフを)抜くとかは不可能です」

弁護側は自分たちの主張に沿った言葉を聞き出せないでいる。一方で検察側は余裕の表情のようにもみえる。

弁護人「Fさんとのセックスのことは記憶にあるが、Fさんから傷を見せられるまでの直前の記憶が飛んでいるというのはどういったことでしょうか?」
鑑定医「わかりません」
弁護人「というのは?」
鑑定医「証明できませんが、あり得ることです」

ここで弁護側は質問を女性弁護人に交代する。
18: 08/11/12(Wed) 03:46
弁護人「これまではKさんが傷つけられることがあったが、今回はなぜFさんが傷つけられたのですか?」
鑑定医「SM行為は日を重ねてエスカレートしていました。刃物が持ち出されることが増え、刃物でK被告に自分を傷つけてくれと頼んだことは十分考えられます」
弁護人「今までFさんから『刺してくれ』と頼まれたことがあったとは聞いていますか」
鑑定医「聞いたことはありません」
弁護人「犯行当日にK被告が脳しんとうになり、意識を失ったのは間違いない?」
鑑定医「そうした時間帯もあったということです」

弁護人による反対尋問は終了し、裁判官による質問に移る。K被告は終始動かないままだ。

裁判官「犯行当時の記憶が残っていないのは、不自然なことではないですか」
鑑定医「はい、不自然ではありません」
裁判官「脳しんとうというのは本人の口から聞いたのですか」
鑑定医「調書の脳神経外科の診断書を参考にしました」
裁判官「脳神経外科の診断ということですが、脳しんとうを起こして後から診察しても、診断はつくものなんですか」
鑑定医「つきます。意識レベル、顔のむくみ、外傷など脳神経外科がいろんな角度から診断していればつけられます」
裁判官「意識が回復するのはだんだん回復するものですか、それともすぐに回復するものですか」
鑑定医「徐々にです」
裁判官「先生の経験ですが、診察で性嗜好障害を見たのはどのくらいですか」
鑑定医「20~30件あります」
裁判官「せん妄状態の患者はどのくらいありますか」
鑑定医「数え切れないほどあります」
裁判官「先生の判断で、脳しんとうはどの段階で起きたと思われますか」
鑑定医「はい。彼女たちのプレイはまず、掃除機のホースをつかんで振り回し、彼女の頭を殴る。その時点で脳しんとうを起こしていたのではないかと思われます。同じマンションの住人が大きな物音を聞いており、それは被疑者が1人で出かけて戻ってきた時間の直後です」
裁判官「本人の記憶で寝ていたら起こされたとありますが、それはどの時点ですか」
鑑定医「彼が帰ってきた後です」
裁判官「脳しんとうの意識障害が伴う『短時間』という表現はどのくらいの時間ですか」
鑑定医「長くても6時間、最小は数分です」
裁判官「被告人が飲酒しているのは(意識障害に)影響しますか」
鑑定医「供述調書にあった分量を飲んでもらったが、臨床も脳波も変わらず、影響はゼロに等しいと判断しました」

裁判官の質問が一通り終わると、裁判長は「証拠を採用し取り調べたいと思います」と述べ、証拠調べの手続きが終了した。鑑定医が退出する際、K被告に軽く会釈すると、被告も深々と頭を下げて応えた。
続けて男性検察官が立ち上がり、事件当時のK被告の精神状態について一般論を交えつつ、改めて詳述する。検察側の意見か、鑑定医の証言を要約したものなのか不明だが「意識障害があったが、犯行時に善悪を判断する能力はあった」と締めくくり、この日の審理は終了した。
被告人席に座り、証人尋問などを聞いていたK被告の表情は、長い髪によって傍聴席からはほとんど垣間見ることはできなかった。しかし、被告人席の背もたれにもたれかかることもなく、背筋を伸ばし続ける姿に“女優”だった一面も垣間見えた。
次回公判は明日12日午前10時から。被告人質問と論告求刑、弁護側の最終弁論などが行われ、早々に結審する予定だ。

19: 08/11/12(Wed) 04:41
・・・

以下、私の私見。

多分、有罪だとは思いますが、刑は軽いでしょう。これはほとんど、安楽死ですよね。
肝硬変で余命まで宣告されているのにもかかわらず酒を飲んで深夜にSM行為をしている。
この時点でFさんの行動は自殺行為である。
二人の関係はゆがんではいたかもしれないがお互い認め合った、望みあった生活であった。

もし私が陪審員だったら、被告が刺したとは立証できない、という判断をするかもしれない。
こんな状況になってる時点で、もう何があってもおかしくない。
二人とも、いつ死んでもいいくらいのつもりだったと思う。

20: 08/11/12(Wed) 05:01
サンケイニュースでは、DVに悩まされた女性が耐え切れずに犯した犯罪、というように書かれていたが、私は違うと思う。
だいたいね、誰が刺したのか、殺す気があったのかなかったのか、故意か事故か、責任能力を問えるか、なんてことより、
もっと大事なものがあるんだよ、人間には。
21: 08/11/28(Fri) 05:37
掃除機のホースをつかんで振り回し、本体で頭を殴っていたそうだ。
そういうことがあった、というのではなく、いつもそういう事をしていたらしい。
そんなことしたら、死んでもおかしくないよね・・・。
だいたい、人を殴って失神させるって、殺人未遂じゃないのかな?
もし立っている人間を殴って失神させたら、そのまま倒れて頭を打って死ぬ、ってあり得るよね?
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