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life

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1: Mon Jul 8 01:26:28 2013
私は生きている。私は1968年に生まれた。そして今まで生きてきた。私は生きようと思っていたわけではないが、生き続けてきた。
2: Mon Jul 8 01:28:59 2013
しばしば、生きていくことは苦痛だった。しかし、その苦痛は生きるのをやめるほどのものではなかった。何かの欠乏は、少し我慢して待っていれば大体解消された。もしくは、自分が求めていたものは別に必要なものでないことがわかった。
3: Mon Jul 15 18:29:45 2013
私の一番古い記憶はなんだろうか。平屋の住まいでネズミが出ておびえたことだろうか。家の近くで三輪車に乗っていて、近所の女の子に呼ばれて振り返った時にドブに落ちて頭を怪我したことだろうか。台風が来て大きな木が暗闇の中で揺れていたのを見たことだろうか。それらは私が生まれたがすぐに引っ越してしまった愛知県名古屋市でのことである。
4: Mon Jul 15 18:34:47 2013
「出身はどこですか」と聞かれると、私は少し迷ってから「名古屋です」と言う。名古屋のことはほとんど記憶にないし、名古屋弁も知らないし、名古屋の名物も知らないし、名古屋弁もしゃべったことがない。名古屋で生まれて、東京に引っ越して、そこも2年くらいで離れて千葉県へ引っ越した。
5: Mon Jul 15 18:41:09 2013
引っ越したのは父親が勤めていた会社で転勤したからである。父は東京に住んでいて大学を出るとサラリーマンになった。最初は東京の本社に勤めていたが、私が生まれたとき父は32歳だった。私が幼稚園に通ったのは東京でだったから、引っ越したのは私が生まれて3、4年たった頃だ。
6: Mon Jul 15 18:48:30 2013
幼稚園の頃のことなら、よく憶えている。数を数えながら家に帰ったこと、半ズボンの尻に縫いあとのある目が大きくて色の白い小生意気な奴が気に食わなかったこと、色が黒くて眼が小さくてやせた、猿のような奴が、わたしの太ももを平手でたたいたこと。
7: Mon Jul 15 18:53:03 2013
その猿のような奴、以降猿吉と呼ぶ、が私を叩いた理由を話そう。その幼稚園で、教材として、木でできた円柱とか立方体を組み立て遊ぶパズルのようなものを購入することになった。私はそのとき妹の分もあわせて二つ購入した。皆がひとつずつしかもらっていないのに二つもらった私を見て、猿吉は嫉妬したのか、不正をゆるさないという正義感にかられたのか、隣に座っていた半ズボンのわたしのももをぴしゃりと叩いた。私はこんなことで他人を叩くという猿吉の性格や人間性に驚いて怒ることを忘れていた。
8: Mon Jul 15 18:54:56 2013
その前だったか後だったかわからないが、私は猿吉の家に遊びに行った。猿吉の父は猿吉をそのまま大きくしたような男で、ジューサーにバナナを皮ごと放り込んだものを私に飲ませてくれた。私は猿吉がどうして猿の様であるのかという秘密がわかったような気がした。
9: Wed Jul 17 01:45:15 2013
それから40年程たったわけだが、わたしは本質的に猿吉に腿を叩かれたときと何もかわっていない。身体は大きくなった。酒を飲んだりタバコを吸ったりした。本を読んだり、映画を見たりした。学校にも通った。仕事もした。しかし、私は物心ついた頃からほとんど何も変わっておらず、世界や世の中や社会というものは不可解でよそよそしいものであり続けている。
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